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2011/11/20

人物造型としてのエーベルバッハ少佐とドン・ペトロ

村雨さんのブログの記事「皇帝円舞曲に萌え萌え」に書き連ねたコメントの再録です(加筆あり)。読みようによってはかなり失礼な内容だとも思うのですが、一人のファンの正直な感想として、記録の意味を込めて自サイトに残しておくことにします。


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多分、皇帝円舞曲で作者はエロイカでやりたいことと、できることはやりつくしたのではないかと。伯爵と少佐の関係として、ここまでと決めていた限界ちょい少し越えぐらいまで、描ききってしまったのではないかと。そこで別作品にとりかかったのではないかと。

そこでアルカサルを描きはじめた時点で、青池先生にとってエロイカはやはり過去の作品になったんだろうと思う。しかし、売れ行きの方はアルカサルとエロイカだと多分ケタひとつ違うでしょう。商業的な見地からはエロイカを描け描けという圧力が必ずあるはず。

青年誌に移動できるかと描いてみた作品は、三作で終わった。(「ドラッヘンの騎士」など)年齢層の高い女性読者向けのオカルトものも、特に好評を得ず。

唯一の例外はヨーロッパ歴史モノで、「修道士ファルコ」「サラディンの日」は素晴らしかったが、長編より手間のかかる短編でもあるし、時代考証などの手間を考えると、費用&時間対効果でいえば、かなりワリの悪い作品になってしまうんだと思う。

日本の漫画界の現状では、小説家と違って本にまとまる書き下ろしだけでやっていくというシステムが無いため、漫画家として現役を貫き、生き延びて何かを書き続けるには、エロイカで連載を持つのが戦略として明らかに正しいわけでしょう。

でもねー、作品としてのアルカサルがエロイカを過去にしたように、人物造型としてのドン・ペトロの成功が、先生の中で少佐を過去にしたんだろうとも思います。

ドン・ペトロには少佐と違って、全人格的な描写がなされている。つまり、夜の部分も含めて。それからもちろん汚い部分。そして弱い部分。どれも少佐には許されない描写です。もちろんエーベルバッハ少佐という、少女漫画のみならず漫画界全体に前例を見ない魅力的な人物造形と、その人物を成り立たせている特殊な描写の切り口は青池先生にしか生み出せなかった傑作であり、私たちは十分にそれに魅せられてきました。なにしろ日本語で少佐といえばやはり鉄のクラウス。(「少佐といえば」でググってみましょう!) しかし、エロイカは再開前の後期には、初期とは違ってどんどんリアルな世界観を持ち始めており、そのなかで全人格的な描写を許されない人物造形というのは、次第に動きが不自由になってきたように思えます。おまけにエロイカのキャラクターたちには、歳を取れないという大きな縛りがある。

人間としての厚みを描きたいときにはどうしてもドン・ペトロのほうに分があり、然らば少佐に残されているのはこれまで以上のデフォルメという方法しかない。だから再開後の少佐は、怒ると髪の毛が逆立ったりとか、そういう感じになっちゃったんだなー。ものすごく逆説的な言い方で言うと「まるでマンガのように」。

伯爵は最初からデフォルメに満ちた人物造形なので、こういった葛藤はないわけです。なにしろ、「レッド・グローリア伯爵」だし。デフォルメの方向が全然別の方向に向きつつあるようですが…。伯爵に危険な香りが全くなくなったのが、私にとっては淋しい限りです…w  

(余談ながら伯爵のこの人物造形のあまりのリアリティの無さが、エロイカフィク界における英国人のプレゼンスを薄くしているしているような気がします。なんかちょっと、ハマるにはつらいのかも。エロイカフィクを書いたり、掲示板に書き込んだりするのは北米人がダントツで筆頭、次がヨーロッパ大陸人で、その次に来るのがAU&NZ、続くのが意外なことにシンガポール/マレーシア/フィリピン華人(英語で教育を受けている層)です。私の印象だけかもしれませんが。)

蛇足ですが、再開後第一作で、伯爵が少佐に「きみまだ独身?(もう結婚した?だっけかな)」って聞いてるセリフがありますね。セリフもあれだけど、その前後の小さいコマで伯爵の表情があっさりしすぎてて色気が無くてなんだかわたし的にはガッカリなあのあたり。あのコマの小さな伯爵の絵とセリフは、読者に対する念押しなんじゃないかなーと思ったり。念を押したいのは:

1) 皇帝円舞曲のあと、この二人の間には何も無かったよ
2) このふたりは何年も音信が途絶える程度の関係だよ
3) 伯爵の少佐への感情って、せいぜいこの程度だよ
4) もちろん少佐から伯爵へも、変な感情なんか無いよ
5) あの続きでラブラブしい路線を期待されても困るよ

あたりかなあ。

しかし現実、数本あるエロイカの人気の柱の一つとして、この二人の怪しい関係はやはり無視できなかったわけで、ためしに間男(←Q)を出して少佐の頭に血を上らせてみたら、ファンの頭にも血が上ってさあ大変!ああ、やっぱりはずせないんだこの要素~、というような経緯があったのではないかと。多分、先生的にはもはやすっかり枯れていらして、そんなことどーでもいいのでしょうけれど。

来月号の番外編がとっても楽しみです。イタリアでパーティ?本屋に予約に行かなくては。るんるんるん。

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