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このサイトについて: 私自身が30年来のファンであり、また海外のslash fandomの一角で80年代から現在に至るまでカルト的な人気を擁する、「エロイカより愛をこめて(From Eroica with Love)」を題材とした、英語での厖大な二次創作群を紹介・翻訳しています。サイト管理者には原作者の著作権を侵害する意図は全く無く、またこのサイトにより金銭的な利益を享受するものでもありません。「エロイカより愛をこめて」は青池保子氏による漫画作品であり、著作権は青池氏に帰属します。私たちファンはおのおのが、登場人物たちが自分のものだったらいいなと夢想していますが、残念ながらそうではありません。ただ美しい夢をお借りしているのみです。

注意事項:
 原作の内容を大幅に逸脱し、男性間の性愛を主題にした明らかに性的な内容を含みます。不快感を覚える方は画面をお閉じ頂けるよう、お願い申し上げます。

2011/08/24

海外フィクにおける少佐の人間像



原作と海外フィクワールドにはいろいろと設定に差異があります。伯爵が薔薇の香りの香水をつけているとか、部長が真剣に陰険な上司で少佐の昇進の邪魔をしているとかパワハラでGと関係を持っているとか、いろいろ「ん?」な点はあるのですが、押さえておかなければらならない2点はやはり、(1)「エロイカはNATOのcontractor(外部契約者)として仕事をすることがある」および(2)「少佐の人間像」、これに尽きるでしょう。特に(2)。

これらはすべて、コミックスで言えば1~3巻あたりまでをスキャンレーション(後述)で読んでハートをぶち抜かれた海外読者が、あっというまに花開かせた妄想の産物だと思われます。妖しく咲き誇る誤解のあだ花ですね。

原作をちゃんと読んでいれば、「エロイカがNATOの外部契約者として数々の任務に参加」というのが無いのは良く判るはずです。伯爵がNATOに協力したのは一回きり。それは、自分の目的に役に立つからこその協力でした。伯爵という自由な個性が、組織に雇われることをうべなえるとは思えない。ただこれは、ファンフィクの中で伯爵と少佐をからませるのに非常に便利な設定なので、多用されているうちに設定として固定されたのは良く判ります。おまけに伯爵は報酬として少佐のキスだの少佐一日着せ替え権だの、好き放題要求していて、これはこれで楽しい。しかし問題は(2)です。

少佐。「少佐の人間像」。

日本においては、再開前の「エロイカより愛を込めて」のファンの人気投票では必ずいつもぶっちぎりで少佐でした。伯爵は、場合によっては2位ですらなかったこともあるのです。クラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハ少佐は、日本の少女漫画に始めて登場した、リアリティに満ちた硬派な、かつ美しくしかも可愛げのある男性として、日本中の少女たち(←含ワタクシ)のハートをぶっすり射抜いたのでした。美しい男性からひたすら愛情を寄せられて、あくまでそれを拒否するというのもツボだったしな~~~。

というわけで、大昔のファン活動とか同人誌とかって、ひたすら少佐(&ドイツ事情)メインだったはずです。伯爵はなんというか、刺身のツマ。

話は少し寄り道しますが、最近若い人と話をしてて思ったのは、若い人の間では、少佐と伯爵の人気がそれほど偏ってないんですよねー。二人でセットで好きだったり、むしろ伯爵のほうが好きというひとも結構いる。これは私のような年代のものにとってはオドロキ!です。昔のファンだと「少佐がいれば伯爵は不要」というひともたくさんいました。なにしろ「魔弾の射手」「Z」という世界がありますからな。

思うに、20-30年前は俺様系の強引な男性がアイロニカルな意味でなしに魅力的だったのでしょうけれど、もうそれは終わったんでしょうね。今の時代、少佐のようなタイプは正面から評価するのではなく、その極端さを半笑いで愛でるという方向に変わってきた。反対に、伯爵のように最先端で一歩横にずれた余裕のある個性のほうが魅力的に捕らえられるようになってきたんだとおもいます。日本人女性の男性に対する評価軸の変化があったのでしょう。



閑話休題。海外フィクにおける「少佐の人間像」に戻ります。これは知らない人はビックリかもしれないです。

「エロイカより愛をこめて」の英語公式版が出たのは2004年。一方、英語のファンフィクションは1980年代から延々と書き継がれています。公式版が出る以前から、非日本人がこの漫画を知っていたのは、大きな声ではいえない事項ながら、スキャンレーションの功労です。スキャンレーションについては別の投稿で書きました。そこでもご紹介したとおり、この件に関しては「親愛なるエロイカへ」のかぼりんさんによる、”初期スキャンレーションのやや偏った訳が海外ファンダムにおける少佐像を決定したのではないか”という優れた分析があります。その記事この記事をお読みいただければ、私の書きたいことは正直ほとんど終わりです。


さらに付け加えるとすれば、健康な成人男性としてのプライベートがあまりにも見えないこと、伯爵に挑発されたときの数え切れない過敏な反応(戦車の中、ローマ風呂、ベルト、再会のキスx2・・・)、極度に肌を見せない性癖等々から、熱に浮かされた読者のみなさんが妄想の翼を自由に羽ばたかせた軌跡がうかがえます。

というわけで、英語ファンフィクの少佐に関し、私たちから見てえええっ!?な設定を箇条書きにすると:

- 男にも女にも童貞
- またはED
- もしくは隠れホモ
- おまけに受けだったり
- 幼児期に性的虐待の経験が
- パパのことを真剣に怖がっている

などなど、です。

衝撃?

Slash版Wikipediaとも言えるFANLOREでは、少佐は上記に加えてasexualとまで言われてます。asexualて!無性???天使みたいな!?

性が無いほどに見えるストイックで無垢な軍人が、海千山千な手練れの男色家の退廃貴族に、数年越しの一途な純愛を捧げられてついに陥落するという妄想が、世界中の一部の乙女の紅涙を振り絞ったのね・・・。ちがうけど。でも書いてて私も萌えてきたw

スラッシュは日本のやおいとちがって、性役割が固定されていない場合が多いのですが、エロイカのファンフィクでは少佐がエライ目に合わされているストーリーがけっこうあります。性的な虐待をうけて、その挙句に死んだり、廃人になったり。または子供のころになんかされたてたり。明らかに伯爵よりひどい目に合ってます。(そういえば伯爵がひどい目に合ってても純粋に気の毒なだけで別にに萌えん…) 私自身は痛いのがちょっと鬼門なので積極的に読みにはいかないのですが、準備無く読んでるうちにこういうのに出くわすことは結構ある。私の翻訳でも近いうちに出るはずです。

少佐は攻めなのか受けなのかは海外の皆さんも気になるところらしく関連スレッドを何箇所か見す。若い世代だと最初から話の後ろのほうまで読んでいるので少佐攻め主流かと思いきや、意見が分かれてますなあ・・・



少佐受けフィクションで訳したいのが二つあります。大変狂おしく受けを求める短編と、今の少佐が読んだら「貴様は誰だ!」と叫びそうな中篇。中篇のあらすじ:東欧の小国の共産党政権を崩壊させるために、髪を切り銀髪に染めて、残虐な独裁者の愛人として大統領府に潜入している少佐。彼には生きてドイツに戻る意思が無く、異国で任務に殉ずる覚悟でいる。彼へ脱出の指令を伝えに行くのが、NATOから依頼を受けたエロイカなのであった・・・。ふたりはまだプラトニックで、少佐は「こんな汚い仕事をしている俺にはキスひとつしてくれない…」と悩む・・・。(なぜか小声で説明)

いかがでしょう?猛烈に読みたくなりませんか?いろんな意味で。

私は2~3巻あたりの絵で脳内再現して、たいへん楽しみました。残念ながらこの作者とは連絡が取れないので、ここで翻訳を発表できる予定はありません。いひひひひ。

というわけで、海外フィクにおいては少佐の人間像がちょっと日本人の我々の常識とはかけ離れていることがありますので、みなさんお読みになる際には心してくださいね! というお話でした。

以上(全然まとまってないが終わる)
  
  

4 件のコメント:

  1. kisaragi fujiko2011/08/24 14:53:00

    海外のファンの少佐像はなんだかすごいねー。
    驚いちゃう。
    深読み!
    面白いです。確かに常識からかけ離れているとる!
    私にとって少佐は、典型的な(理想的でもある)会社の上司、お父さんのイメージなんだけど。もちろん良い意味です。
    当然受けませんよ。(深読みできないだけかもしれない!
    許してください、海外の方)

    そんな私は、伯爵しか目に入らないファンなので
    一番好きな作品も「ミッドナイトコレクター」でした。
    もうぜったい伯爵は、あーゆー過去があるの!と、喜び合う友達もいないのでじみーに感激しておりました。
    今はなぜかケルティックスパイラルも好き。
    (やはりQが穴に落ちたのが、たまらない・・・たわごとです・・忘れてください)

    エロイカファンがドイツとかNATOとかに興味をもたれていたのもなんだかわかります。
    というのも、私は伯爵(青池ワールド)からイギリスとZEPに夢中になりました。人生の大半をそれらにささげております。
    そういえば数少ない伯爵ファンでもある友達(私より年上)もZEPとミッドナイトコレクター好きですなぁ。

    今のファンの方々とは接する機会もないので、いまひとつどう思われているのかはわかりませんが、というかいまさらZEPに憧れないだろうし、ドイツやNATOも身近な存在だもんね。
    同じ作品を好きであるというのはこの上ない幸せでありまする・・・。
    私もケルヒャーを愛用するドイツ家電ファンですー

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  2. >当然受けませんよ。

    記事で紹介した海外のスレッドでも、「Can you honestly see Klaus being uke? :|(あなた本気でクラウスが"受け"に見えるの?)」と発言する人もおり、様々です。

    私の学生時代からの親友も純粋な伯爵派。海外フィクを紹介したら、「エロイカは少佐が嫌がってるのがいいの。だからこういうのはイヤ。」と一刀両断にされてしまいました。彼女も「ミッドナイトコレクター」が一番好きだそうです。

    我が家もシーメンスの家電が2台あります。単純なデザインでヘビーデュティなところが、考えてみれば少佐そのまんまです。

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  3. kisaragi fujiko2011/08/26 13:49:00

    >少佐が嫌がってるのがいいの。だからこういうのはイヤ

    なるほどー!
    それで、私の妄想のなかではQとかサバーハが出てくるんだな!
    別格は少佐なんですよ。もちろん!だって伯爵が愛する男だもん。

    ドイツ家電・・・
    うちのケルヒャーはフローリングを掃除するマシンなんですけど、熱湯を沸かしつつ、それを吐き出す・・・なんか少佐みたいな。

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  4. ネスカフェのために熱湯を沸かしつつ、ひっきりなしに煙草の煙りを吐き出すわけですね。わかります。(ちがう)

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