"I'm sorry, Major. Rape fantasies just don't do anything for me."
という伯爵のセリフをどう訳そうか、ここ数日考え込んでいるというわけです。いかにも伯爵らしい言い方で大好きなんだけど、うまい日本語にならない。
"fantasy"という語はもちろん想像とか空想とか幻想という意味が第一義で、そこから転じてばかげた話とか気まぐれという意味もあります。あとは、ある種のドラッグの呼び名とか。ですが、ポルノとかスラッシュの中で使われる場合はたいてい、「どういう対象や状況に性的に興奮するか、その対象や情況」を指すことが多いのです。
これを一語で表現できるうまい日本語が見当たりません。たぶん、私たちの文化の中ではそういったものを真面目に考えてきた歴史が浅いため、成熟した用語がないのでしょう。岸田秀の『性的唯幻論序説』 のなかでは、人間のこの"fantasy"について「幻想」という語を用いて説明しています。
もっとも、下世話な表現なら一つ二つ思いつきます。「おかず」もしく「ズリネタ」。この表現で、意味は完全にわかっていただけるでしょう。もちろん、使う気には全くなれませんが。
つまり伯爵には強姦願望は全くないわけです。するほうもされるほうも。抑圧ということのなさそうな人なので、たいへん健全なわけですね。一方少佐のほうはどうなのか。初期の少佐は精神的に、もっとはっきり言ってしまえば性的に厳しい抑圧下におかれた人物のように描写されています。この二つのキャラクターは、あらゆる点(性格・職業・外見ほか)で意図的に対称的に設定されているわけですが、それでは少佐の"fantasy"とは、いったいどういったものなのでしょうか。asexualでもない限り、"fantasy"は必ずあるものです・・・。あなたにも、わたしにも・・・。
伯爵が、世間一般では変態と呼ばれてしまう性的な嗜好を持っているけれども、一人の人間としてはとても健全、というのは私も感じていました。でも言葉として浮かんではこなかったのでとてもすっきりした気分でございます。ありがとうございます。
返信削除性欲があるというのは人として当たり前なので、少佐のあの潔癖ぶりは潜在意識下でマグマのように渦巻いて出口を求めている本能の激しさの裏返しのような気がします。
そうなんですよね。愛情表現にためらいのない人ですし、美術の審美眼的にもすごく健全だし、まっとうな育ちをしてると思う。それは幼年期から父親のまっすぐな愛情をうけていたからなのでしょう。
返信削除というふうに考えると、少佐の抑圧の原因はやはり父親かな、というふうに皆考えてしまうわけで、英語のファンフィクの世界では、少佐のパパが悪者にされてることが多いんですよねー。